ボツになっていなかった.本日(10月7日)の佐賀新聞に掲載されました.

 先輩の投稿の後に,私の投稿が掲載されました.佐賀新聞さん,ボツにしたと早合点してすみませんでした.

佐賀新聞に投稿した原文はこれです.

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学力向上対策に思う.  古川美樹(65歳)

昨年度で38年間務めた学校現場を退職した.

教職生活は,40年ほど前の高等学校の物理講師から始まり,正式に県に採用されてからは,小学校と中学校の主に理科教育を専門として,担任や級外,教務主任などを経験した.

先日の新聞タイトル『「主体的な学び身に付く工夫を」 佐賀県,学力向上対策で委員会』は,4月の全国学力・学習状況調査結果に関する内容である.

記事は,結果の検証を委員会で行い,「子どもが主体的に学び,家庭と連携しながら家庭学習を充実させるよう助言」とあった.

しかし,ちょっと変である.いったい主体的に学ぶ場所は何処であろうか.また,これは,誰に対しての助言なのか.この文脈ならば,家庭学習に対して助言したと捉えられてしまう.しかしながら,調査の結果は,学校教育の結果に対してのものであり,この委員会の正式名称は,「県学力向上対策検証・改善委員会」と称され,主として県内の小中学校における教育指導の成果を検証し,その結果によっては指導法等々の改善を助言するものである.

考えてみれば,ここ数年の委員会の助言内容は,家庭学習に対して行われていたと記憶する.

しかし考えてもらいたい.そもそも,学力は学校で身に付けさせるべきものであり,学校教育がどのように行われてきたかの調査結果であろう.今回のような助言は,学力の外部決定論に基づいたものである.つまり,家庭学習の良し悪しが少なからず児童・生徒の学力に影響すると聞こえてならない.しかし,長い教員生活を振り返れば,様々な家庭環境とともに,日々の生活を送ることで精一杯のご家庭もあった.親御さんの勤務態様も様々であった.必ずしも家庭学習の重要性を批判するわけではないが,今回のような助言は様々な環境の家庭に対して,一様に届くのだろうかと考えてしまう.

やはり,学力は内部決定論の中で,つまり学校での教育について議論すべきではないだろうか.上手くいかなかったのなら,これまでの授業でやってきたことを見直すことも,そろそろ必要ではないか.

私は学者であり,学力を身に付けることに関係する内容を主に研究しているので,どうして今の学校教育で成果が出ないかは分かっているつもりだ.

実際に,小学校の理科専科として多くの児童を指導した中の,ひとつの事例を紹介しよう.その児童は,特別支援のクラスに在籍しており,4月に担任の先生から「授業の時は寝ます」と聞かされ,最初の授業では早速その通りになったが,もちろん無理して起こしはしなかった.この児童が,回数を重ねる毎に徐々に興味を持ちだし,板書された内容も丁寧にノートに記すこともできるようになってきた.評価テストも受けるようになり,良い点数も取れる様になり,ついには100点も取れた.当然,支援員の先生も必要なくなった.この児童の学力が上がったことに,家庭学習は関係がない.他にも成績が上がった児童は沢山いたし,何よりも理科が好きになってくれた.これは,興味関心の高揚だけでなされた訳でなく,これまでの様々な研究成果に見られる学術的知見の適用によるところが大きい.大学が研究を行っている理由は,まさにここにある.

学力向上に関しての委員会としては,教育学の他に学際的な視点で,例えば認知科学や脳科学等の知見を盛り込んだ学力の内部決定論を中心とした議論こそが重要であろう.

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