「アメリカの自民党」と化した日本:操作される危機とアイデンティティの消失
1. 日本人のアイデンティティと「守護者」の必要性
おそらく、今回のような選挙結果になった背景には、現代日本人の特性が深く関与していると考えています。他国民と比較して、日本人はアイデンティティが低い傾向にあります。戦国時代から江戸、明治、大正、昭和へと続く長い歴史を振り返っても、五人組制度や「向こう三軒両隣」に見られる横並びの意識、天皇を頂点とした臣民制度など、日本人は「周囲から逸脱していないか」を確認し、他者と同じであることに心地よさを感じる民族でした。
これは、島国ゆえに他国からの侵略が少なかった地理的特質や、狭い領土による物理的距離の近さが影響しています。隣人の声が直接耳に入り、同じ空気感で生きることが日本人としての生存戦略であり、それがDNAに刻まれてきた結果といえるでしょう。昭和の高度成長期に「一億総中流」という言葉が浸透したのも、その現れです。
このような国民性を維持するために不可欠だったのが、自分たちを守ってくれる「守護者」の存在です。古くは卑弥呼や将軍、明治以降は天皇がその役割を担いました。しかし、敗戦を機にアメリカはこの構造を巧みに利用しました。マッカーサーは天皇を戦争犯罪から除外し、自身と並んだ写真を公開することで、日本人の意識に「アメリカを天皇と同列の守護者」として刻み込んだのです。ここから、日本のアメリカ属国化論が始まったと考えられます。
2. 自民党という統治装置と「危機の演出」
戦後、アメリカ主導の反共思想とともに自民党が結成され、その裏盾として統一教会がセットされました。この文脈において、日本国民には「アメリカは日本を守る存在であり、共産主義は排除すべきもの。自民党はその推進役である」というメッセージが深く刷り込まれたのです。
1990年代にバブルが崩壊し、自民党への信頼が揺らぐと、次に現れたのが小泉純一郎氏による「自民党をぶっ壊す」という演出でした。しかし、これらもアメリカによる属国化を維持するための「シナリオ」の具現化にすぎません。昨年の自民党総裁選挙では,石破前首相がアメリカ自民党の本質を理解していたために,その対立候補として高市が担ぎ出されました.
ここで重要だったのが、高市氏を「救世主」あるいは「ジャンヌ・ダルク的英雄」として演出することでした。そのためには「日本の危機」というシナリオが不可欠です。そこで選ばれたのが、かつての植民地であり親日的な「台湾」の危機でした。日本人が住んでいない尖閣諸島よりも、親近感のある台湾の方が国民の感情を動かしやすいためです。高市氏は、自民党が自ら築いてきた「台湾問題は中国の国内問題である」という歴史的経緯(田中角栄総理大臣・大平正芳外務大臣らによる日中国交正常化)を封印してまで、存立危機事態を強調し、支持を広げました。
3. ネット社会の確証バイアスと批判的思考の欠如
アイデンティティの確立していない日本人は、ネット社会で再び情報操作の渦に巻き込まれます。YouTubeのアルゴリズムは、ユーザーの指向に合わせた情報のみを提示する「確証バイアス」を増幅させます。高市氏を支持する層には彼女の疑惑や失策は届かず、逆に批判的な層には批判的な情報のみが流れる仕組みが正しい判断を阻害しました。そしてこの分断の中で、危機でもない現状が「危機」として受容され、救世主への熱狂が作られました。
日本の教育現場において、論理的に物事の本質を見極める「クリティカル・シンキング」が実践されていないことも大きな要因です。メディアや権威の情報を鵜呑みにする国民性は、アメリカ(あるいはアメリカナイズされた自民党)によって都合よく形作られてきました。
今回の選挙結果は、アメリカにとって大きな収穫でしょう。それは東アジアという独特の文化圏に、事実上の「日本の州」が誕生したことを意味します。今後、多くの自民党議員は「日本のために」という旗を振りながら、実際にはアメリカの資本主義や戦略のために働くことになるのだと考えられます。
(文責:Furukawa Yoshiki)